STORY 04
挑戦という伝統 〜四代125年の系譜〜
江戸から明治へ、和装から洋装へという日本服飾史の大きな転換点で、博多織の世界に飛び込んだ初代。激動の昭和を乗り越え、高度成長の波を乗りこなして発展の基礎を築いた二代目。バブル崩壊前に時代の潮目を読み、好景気だった和装業界に埋もれず、新たな絹製品開発への扉を開いた三代目。そして先達の想いを受け継ぎながら、またも訪れた時代の転換期に立ち、なお挑戦を続ける四代目。
四代125年の歴史を持つ森博多織を支えてきたのは、挑戦を続ける「進取の気性」であり、「伝統に囚われないという伝統」です。
しかし、変わらず守り続けてきたものもあります。それは「絹と生きる」ということ。博多織の技術とは、絹を扱う技術。どれだけ新しい挑戦を続けても、博多織の命である絹からは離れません。絹と生き、絹に挑んできたからこそ、森博多織の技術力は培われ、それが新たな挑戦の土台になっているからです。
そしてもう一つ。お客様に、人に喜ばれるということ。森博多織の歴史と挑戦のすべては、ここに注ぎ込まれてきました。使う人の役に立ち、喜ばれる品を提供する。そうでなければ、商品にも会社にも存在価値はない。初代から当代まで一貫した考えです。
四代目・森 議夫の新構想も、この「絹と人」が念頭に置かれています。例えば絹のタオルやミトン。布製品を擦り切れるまで使うことは、経済的には美徳かもしれませんが、人の肌にとっても良いことでしょうか。少なくとも絹タオル『つや肌』については違います。肌触りや吸水性、そして保湿・抗酸化成分などは、永久に続くものではありません。肌に最も良い状態で使ってもらうためには、1〜2カ月に一度は交換が必要です。そのためには、交換できる価格で提供し、〝価値ある消耗品〟として広く消費者に受け入れてもらえるよう、開発を続けています。それが、絹の長所を最大限に活かし、お客様の肌や健康を守ることだと信じて。
「絹と人」に生かされてきた、私たち森博多織。三代目・森 純一は、生かされるということを「目に見えない応援」と表現します。
応援してくださるのはお客様だけではありません。取引先を始め周囲の商売にも敬意を払い、目先の利益や自分たちの都合だけを優先しない。社員を育て、家族を大切に思い、ご先祖に感謝する。そうすることで、目に見えない応援が、私たちの背中を押してくれると考えています。
ビジネスの世界では二の次にされがちなことかもしれませんが、この気持ちを忘れては、人に寄り添ったものづくりはできません。
誰のために、何を作れば喜んでいただけるのか、それはどうすれば作れるのか。常に考え続けることが、森博多織の使命でもあるのです。